映画「プレシャス」観ました(ネタバレややあり)

May 11, 2010

映画「プレシャス」観ました。

父親の子を身ごもり、母親から虐待を受けている
悲惨な境遇の主人公が、最終的に愛を理解する、的なストーリーです。

映画「プレシャス」予告編

予告編を見たときは、正直、「苦手なタイプの映画だ」と思ったんです。
可哀想な主人公が、最後に希望を見つける系の、
いわゆる「美談押し付け系」映画っぽい印象を受けたからです。

でも、実際はそんな安っぽい映画じゃなかったんです。

まず、主人公プレシャス演じるガボレイ・シディベの演技が、超リアルだった。
彼女は、元々女優でも何でも無いらしく、演技経験はもちろんゼロ。
だからこそ、というべきか、ハリウッド女優では出来ない、
生々しいリアルな演技に、かなり入り込めました。

一番すごかったのは、母親を演じるモニークの鬼気迫る数々のシーン。
このひと、有名なコメディエンヌさんらしいですね。
階段の下から、娘を罵倒するシーンなんか、「格好良さ」すら感じました。
(畳み掛ける罵詈雑言のリズムが良すぎてラップのフリースタイルみたいだった:予告編25秒目)

そんな二人の演技と、ドキュメンタリー風のカメラワークで、
一気に、物語に引き込まれます。

ただ、ただですね、
途中、主人公が華やかな生活の自分を妄想するシーンがいくつかあるんです。
そこだけ、カメラがバシッと固定になるという、
いわゆる「ダンサーインザダーク」方式の撮り方になるんですが、
そのシーンに関しては、結構微妙でした。

アイロニーを含んだユーモア演出に、
泣いていいのか笑っていいのか、分からなくなるんです。
笑ってるお客さんもいたし、監督も笑わせるつもりのシーンだったらしいのですが、
僕は、感情がパニックになってしまって、少し冷めてしまいました。

まぁそんなシーンを挟みつつ、
本当に悲惨な人生を歩んできた主人公が、ラストどうなるのか。
一番の見せ所です。

予告編だけ見ると、ハッピーエンドぽい小奇麗なオチを懸念してたのですが、
意外や意外、最後まで救われないんです。
確かに、子どもへの愛だったり、先生の愛だったり、
母親の本当の気持ちに気づいたり、救いようが全く無いわけじゃないけど、
ラストは手放しで「ハッピーエンド」とはとても言えません。

そういう意味じゃ、もやもやが残ってしまう映画かもしれません。
でも逆に、そこがまた、リアルで良かったんですよ!

結構なダウナー系映画なので、好き嫌いは別れると思いますが、
個人的には、小奇麗なだけのアリスインワンダーランドよりは、断然オススメです。

あと、脇役だけどマライア・キャリーの黒髪&すっぴんの体当たり演技、ファン必見です。

白坂翔
白坂翔

1984年生まれ。ボードゲームカフェJELLY JELLY CAFEオーナー、将棋カフェCOBINオーナー、マーダーミステリー専門店Rabbitholeプロデューサー、株式会社人狼の代表取締役。ポーカーとゴルフが好きです。MORE

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